東北大学 大学院理学研究科・理学部

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ジェンダーバランスのとれた環境を実現し、多様な人材を育成する理学部に
国立大学法人10大学理学部長会議声明

概要

このたび国立大学法人10大学の理学部で連携し、ジェンダーバランスの課題に取り組むことを宣言し、声明を発表いたします。さらに、この声明にあわせた取組の一つとして、新たに学生や保護者、高校の教員の方々に理学の魅力を伝えるウェブサイト「理学ナビ」を10大学で立ち上げます。

理学部は自然界のフロンティアを探究し、新たな真理の発見と新しい概念の構築に貢献するとともに、今日の我々の生活を豊かにする科学技術を支えてきました。真理を探究する「理学」は全ての人に開かれています。しかし、全国的に、どの大学の理学部でも女子学生数の比率が著しく低く、ジェンダーバランスが実現できているとは言い難い状況です。このジェンダーバランスは、社会的な構造や背景とも関係していると考えられます。大学をはじめ、これまで様々な検討と対策がとられてきていますが、今後も引き続きさらなる対応が必要です。

今回の声明のポイントは次の2つです。

1.性別や国籍等の属性に関わらず、学びや研究を安心して進められる理学部をつくるために、環境を整備し、学生をサポートしていきます。

2.理学部で学ぶことに対する不安を解消できるよう、理学部での大学生活や卒業後のキャリアパスの情報提供を充実させます。

20230518_3.jpgなお、理学を志す学生にむけて情報提供する場のひとつとして、新たにポータルサイト「理学ナビ」(右)を立ち上げます。各大学におけるキャンパスライフに関する情報や理学部を卒業・修了後のキャリアパス、さらには理学部の魅力を伝える情報を今後掲載する予定です。
理学ナビ https://navi.sci.kyoto-u.ac.jp/

□ 東北大学ウェブサイト









声明文

理学部は自然界のフロンティアを探求し、新たな真理の発見と新しい概念の構築に貢献するとともに、今日の我々の生活を豊かにする科学技術を支えてきました。真理を探求する「理学」は全ての人に開かれています。しかし、理学部では女子学生の比率が著しく低く、ジェンダーバランスが実現できているとは言い難い状況です(※1)。ジェンダーバランスは、平等な社会の実現、多様な意見や視点の確保、持続可能な社会の実現など多くの観点から重要です。女子学生の比率が低い分野は理学部だけではありませんが、他の分野におけるジェンダーバランス是正に向けても、まず理学部として声を上げるべきと考えました。

このジェンダーバランスは、社会的な構造や背景とも関係していると考えられます。これまで様々な検討と対策がとられてきていますが、今後はさらなる対応が必要です。進路選択に関する内閣府の調査結果(※2)によると、男女問わず、男性女性どちらかが極端に多い学校に進学したくないと思っている中学生は全体の半数近くおり、ジェンダーバランスは大学にとって改善すべき課題であることがわかります。また、理学部が適切なジェンダーバランスを実現できていないということは、理学部が人材育成の場として「多様性のある環境を提供できていない」ことを意味します。単に大学進学に関係する問題としてだけではなく、大学の重要な役割の一つである人材育成という観点からみても、深刻な問題です。

世界に目を向けてみると、国連はSDGsの目標5番目に「ジェンダー平等を実現しよう」を掲げており、多様な人材が活躍することが期待されています。SDGsだけでなく、国連教育科学文化機関(UNESCO)のSTEM and Gender Advancement(SAGA)プロジェクト(※3)では、科学、技術、工学、教育における男女間の格差を是正することを目的としており、その中では女性の活躍が広く見えるようにすることも重要だと示されています。また、イノベーションを創出する概念として、研究や開発において性差に着目して技術革新を目指すジェンダード・イノベーション(Gendered Innovations)も注目され、これまで画一的な視点で行われてきた研究を、新しい視点による多様なアイディアで発展させる動きもでてきています。このような世界的な動きが活発化している今、それらと歩調を合わせて理学部におけるジェンダーバランスの実現に向けた行動を起こすことがとても重要だと考えています。

ジェンダーバランスの問題は多くの大学の理学部において共通しているため、今回、国立大学法人10大学の理学部が連携してこの問題に取り組むことを決意しました。

私たちは、以下の2点を宣言します。

1.性別や国籍等の属性に関わらず、学びや研究を安心して進められる理学部をつくるために、環境を整備し、学生をサポートしていきます。

2.理学部で学ぶことに対する不安を解消できるよう、理学部での大学生活や卒業後のキャリアパスの情報提供を充実させます。

ウェブサイトでの情報発信等、理学部で展開されている研究教育活動を知ってもらう場を増やし、理学部への進学を躊躇させる要素を取り除いていくことで、様々な人々が切磋琢磨しながら学ぶことができる場が整うと考えています。

好奇心に基づき原理を探求する「理学」という基礎学問を通じて、複雑化し答えがすぐに見つからない課題に対して、幅広い視野のもと知力と気概を持って果敢に挑戦する人材を育成する場が理学部です。理学部が真に開かれた場となり、これまで以上に多様な人材を育成し、社会に送り出します。今後とも理学部にご支援の程よろしくお願いいたします。


国立大学法人10大学理学部長
北海道大学理学部長       網塚 浩
東北大学理学部長        都築 暢夫
筑波大学理学系組織連絡会議議長 初貝 安弘
東京大学理学部長        大越 慎一
東京工業大学理学院長      久世 正弘
名古屋大学理学部長       寺崎 一郎
京都大学理学部長         田中 耕一郎
大阪大学理学部長        深瀬 浩一
広島大学理学部長        黒岩 芳弘
九州大学理学部長        寺嵜 亨



※1 内閣府男女共同参画白書(令和4年度版)
大学(学部)及び大学院(修士課程、博士課程)学生に占める女子学生の割合(専攻分野別、令和3(2021)年度では、理学での大学(学部)における女子学生の割合は27.8%、大学院(修士課程)では23.6%、大学院(博士課程)では21.0%となっており、他分野と比べて理学、工学の分野が著しく低い。

※2 内閣府の調査結果
「女子生徒等の理工系進路選択支援に向けた生徒等の意識に関する調査研究」調査報告書 68ページ

※3 UNESCO STEM and Gender Advancement (SAGA)



問い合わせ先

<報道に関すること>
東北大学大学院理学研究科
広報・アウトリーチ支援室
電話: 022-795-6708
E-mail:sci-pr[at]mail.sci.tohoku.ac.jp
*[at]を@に置き換えてください



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