本研究科 物理学専攻の市川温子教授の2023年度仁科記念賞を受賞しました。
仁科記念賞は、故仁科芳雄（にしな よしお）博士の功績を記念し、日本において物理学とその応用に関して優れた研究業績を挙げた研究者に授与されます。

■業績題目
「ニュートリノ振動における CP 非保存位相角 δ への制限」
"Constraining CP violating phase δ in neutrino oscillations"

■業績要旨
茨城県東海村のJ-PARC大強度陽子加速器施設で生成されたニュートリノを295km離れた岐阜県飛騨市神岡のスーパーカミオカンデで測定するT2K実験は、ニュートリノ振動現象において、CP対称性といわれる粒子と反粒子の対称性の破れを探索した。2020年に発表された結果では、CP対称性の破れをもたらすCP位相角δについて、取りうる値の半分近くを3ς以上の信頼度で棄却している。CP位相角に対して初めて実験的な制限を与えたもので、同時にCP対称性を保存する値に対しては95%の信頼度で排除しており、CP対称性の破れの示唆をも与えている。市川氏は、T2K実験の提案時からビーム強度を高めるための設計に取り組み、特に電磁ホーンと呼ばれるニュートリノビームを収束させてビーム強度を高めるための装置の実現に中心的な役割を果たした。

■関連情報
公益財団法人 仁科記念財団 仁科記念賞