● 次元融合ナノ物質科学分野の国際的な教育・研究のハブ構築を目的とした寄附講座が第二期を開始しました。
2021年、東北大学大学院理学研究科(現研究科長:都築 暢夫)は、株式会社 深松組(代表取締役社長:深松 努)の寄附により「次元融合ナノ物質科学」に関する寄附講座を開設しました。深松組はかねてから環境問題に強い関心を持ち、基礎科学の発展こそ環境問題の根源的な課題解決に至るとの考えのもと、この度、基礎科学を推進する目的で東北大学大学院理学研究科に寄附をいただいたものです。
本寄附講座は2016年度から2021年度まで東北大学学際研究重点拠点「新奇ナノカーボン誘導分子系基盤研究開発センター」が築き上げた研究成果を基盤としています。同センターでは、本研究科が中心部局となり、次世代機能性材料の有力候補であるフラーレン(注1)や原子内包フラーレン(注2)などをはじめとするナノカーボンに関する研究を推進してきました。その実績を踏まえ、本寄附講座では本学での基礎研究の蓄積から生まれた金属を内包したC60フラーレン(注3)の初めての例であるリチウムイオン内包C60フラーレンを中心に、その基礎と応用研究を行っています。
具体的には、以下の3点を研究の柱としています。
1. ボトムアップ型ナノテクノロジーを基盤とした次元融合新奇ナノ物質の創成
2. 超スマート社会における競争力向上に向けた基盤技術の強化:新奇ナノ構造材料や高機能材料など、分野の差別化に繋がる革新的な素材・ナノテクノロジー研究の先導
3. 革新的なエネルギーデバイスや分子センサー等への応用研究
この度、同寄附講座は、2024年11月より第二期を開始し、第一期の研究成果を土台として、更なる研究の深化を目指します。
第一期においては、次世代のナノ物質科学において重要な進展が見られました。特に、新しいプラズマ照射法や分子手術法などの手法が開発され、フラーレン内部に原子やイオンを内包することで現れる特異な電子的特性や反応性に関する理解が深まりました(下図)。また、原子内包フラーレンの量子情報処理や分子スイッチ、メモリといった先端デバイス分野への応用、および化学修飾による特性制御に関する研究が着実に進展しています。さらに、エネルギー分野においては、フラーレン誘導体を電子輸送層に用いる改良や、原子内包フラーレンによる正孔輸送層へのドーピングにより、ペロブスカイト太陽電池の変換効率が向上し、長期安定性において顕著な改善が見られました。
本研究の推進は、将来的には、現在社会的な課題となっているシリコン太陽電池の廃棄問題をはじめとする環境問題の解決に貢献することが期待されます。
1. 新ナノ材料の高効率合成技術開発
高効率プラズマ照射装置を用いたフラーレンへの原子内包プロセスの解明
同分野のプラズマ理学の体系確立と実践的な研究・教育を推進
2. 新概念の発電・蓄電機構の構築
新奇ナノ物質を用いた全く新しい発電・蓄電機構の開発
革新的エネルギーデバイスの基盤技術を確立
3. 革新的磁性材料、分子センサー、分子メモリへの応用
ナノカーボンの次元配列制御により次世代の機能性材料を創出
4. 国や地域を超えて研究と教育・人材育成の両面で国際的な地位を確立
● 新ナノ材料の高効率合成技術が確立され、本材料を中心とする学際的な研究・教育の拠点を形成
● 新概念のエネルギーデバイス技術の創出により枯渇性資源によらないエネルギーシステムを構築
● 新奇な次元融合ナノ物質を用いた次世代の革新的なデバイスを創出
注1. フラーレン:複数の炭素原子のみから構成される閉殻空洞状のクラスターの総称である。サッカーボールのような形状をした炭素60個から成る球状のC60(シーロクジュウ)フラーレンが代表的な物質である。これは、1975年に豊橋科学技術大学の大澤映二によってその存在が理論予測され、1985年にハロルド・クロトー、リチャード・スモーリー、ロバート・カールの3名により発見されて1996年には発見した3名がノーベル化学賞を受賞した。
注2. 原子内包フラーレン:フラーレンの内部空間に原子を含む物質の総称。
注3. 金属内包C60フラーレン:炭素60個から成るフラーレンの内部空間に金属を含む物質。
本 社:〒981-0931 仙台市青葉区荒巻本沢二丁目18番1号
代表者:代表取締役社長 深松 努
創 立:大正14年3月1日
資本金:9,347万円
TEL :022(271)9211(代表)
FAX :022(275)7012
URL :https://www.fukamatsugumi.co.jp/
事業内容:宮城県仙台市に本社を置く総合建設業者。1925年、富山県下新川郡朝日町で水力発電所建設の施工を主な事業とし、創業。本業の土木・建築は勿論、不動産賃貸事業、再生可能エネルギー事業、沖縄開発事業、アクアイグニス事業、海外事業等などを行っている。
<講座に関すること>
東北大学大学院理学研究科
担当:教授 寺田 眞浩、准教授 權 垠相
(事務担当:総務課研究支援係)
電話:022-795-3798
Email: sci-kenkyu[at]grp.tohoku.ac.jp
<報道に関すること>
東北大学大学院理学研究科
広報・アウトリーチ支援室
電話: 022-795-6708
Email:sci-pr[at]mail.sci.tohoku.ac.jp
*[at]を@に置き換えてください