お知らせ

動物は地球にこの先いつまで生存できるのか? ―過去の生物多様性変動パターンから遠い未来を予測する―

発表のポイント

● 生物多様性の過去の変遷パターンから、未来の昆虫、陸上四足動物、海洋動物の多様性変化を予測しました。

● 後生動物(注1)は今から約5億年後から次第に減り始め、約10億年後に完全に消滅するとの予測結果が得られました。

● 後生動物の減少の主要原因は、太陽光度の増加による気温上昇と大陸風化増加による大気中の二酸化炭素と酸素の減少です。

● 完全消滅の原因となりうるのは、突発的な大規模火山活動による地球温暖化です。

□ 東北大学ウェブサイト



概要

刺胞動物から脊椎動物に至る後生動物(器官がある多細胞動物)の多様化は、今から約7億〜5億年前に始まり、氷期と温室期の気候変動、火山活動、隕石衝突、大気中の酸素濃度の変動などが生物多様性の変遷を促してきました。これらの歴史的パターンを理解することは、現在進行中の気候変動の中で将来の生物多様性の傾向を予測するうえで貴重な知見を提供します。

東北大学の海保邦夫名誉教授は、これらの要因と太陽光度の増加に加えて、人為的要因、二酸化炭素減少による植物危機と大気酸素減少、人為的要因も統合することで、未来の地球平均気温の変化を求め、4つの可能性のあるモデルについて、多様な生態系における後生動物多様性喪失の予測の精緻化を図りました。その結果、地球平均気温は漸増し(図1)、5億年後から後生動物多様性の漸減が始まり、後生動物は約10億年後に、突発的な大規模火山活動によって完全に絶滅するという予測が得られました(図2)。その完全絶滅は、突発的な大規模火山活動を計算に入れない場合よりも2億年早くおきます。

本研究の成果は、欧州地球科学連合の国際誌Biogeosciencesに2月10日に掲載されました。



詳細な説明

研究の背景

刺胞動物から脊椎動物に至る後生動物(器官がある多細胞動物)の多様化は、今から約7億〜5億年前に始まり、動的な環境変化によって形作られてきました。氷期と温室期の気候変動、火山活動、隕石衝突、大気中の酸素濃度の変動などが生物多様性の変遷を促してきました。これらの歴史的パターンを理解することは、現在進行中の気候変動の中で将来の生物多様性の傾向を予測するうえで貴重な知見を提供します。億年スケールの未来の気温変化は、太陽光度の増加に基づき求められてきましたが、氷期と温室期の気候変動と火山活動―隕石衝突による気候変動は考慮されていませんでした。また、後生動物の多様性変化は示されていませんでした。


今回の取り組み

太陽系誕生以来続く太陽光度の増加(図1の破線グラフ)は、未来において、後生動物の気温上限閾値を低緯度で超え、さらに上昇すると高緯度でも超えます。同時に、その気温上昇によって大陸風化が進み、そのために大気中の二酸化炭素と酸素が減少します(図1)。二酸化炭素減少によるC3植物危機、漸次的大気酸素減少、漸次的地球温暖化は、今から5億年後以降、後生動物の多様性を減少させます。そして、全緯度の地上・地下・海洋表層・深海の全てにおいて、最暖月の最暖時平均気温が、後生動物の気温上限閾値46度C(タンパク質の変質)を超えると完全絶滅に至ります。地球の歴史においては、過去5回、1億年ぐらいの間隔で起きると予測される大規模火山活動と大規模隕石衝突による「ビッグファイブ」と呼ばれる大絶滅時がありました(5回のうち4回は大規模火山活動で、残りの1回も温暖化は大規模火山活動の影響)。過去の大絶滅では、動物の多様性は回復しました。しかし、太陽光度の増加が進んでいることで地球のすべての後生動物が生き残れない高温に達すれば、完全絶滅に至ります。

未来の気温計算は、他の研究によってなされてきましたが、氷期と温室期の長期気候変動、火山活動と隕石衝突による突発的気候変動は、考慮されていませんでした。今回、マントル温度の低下を計算に入れて大規模火山活動による地球平均気温と動物多様性変異を計算した結果、それらを考慮に入れない場合よりも後生動物の寿命が2億年短くなるとの予想が得られました。


今後の展開

動物が地球から消滅するまでの動物の多様性変化と消滅の時期を予測した本研究成果を土台にして、未来の地球生物の存続問題を多角的に検討する研究が期待されます。


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図1. 過去および将来25億年にわたる全球平均地表温度と大気中CO₂濃度および酸素濃度。全球平均地表温度(a)、CO₂含有量(b)、大気中酸素濃度(c)を、過去10億年間(−1.0 Gyr)から将来1.5 Gyr(+1.5 Gyr)までについて、後生動物の絶滅閾値および気候フェーズとともに示す。Mello and Friaça(2019)を基にした黒の破線は長期的な履歴トレンドを示す(誤差範囲:−0.1~+0.2 Gyr)。オレンジ色の折れ線は、Scotese et al.(2021)の履歴データおよびVérard(2024)による−1.0~−0.6 Gyrの推定値に基づく、長期的な氷室-温室の周期変動を示す(誤差範囲:±0.1 Gyr)。両曲線の将来予測は、現在の全球平均気温(14 ℃)を示す緑色の星印から開始する。オレンジ曲線の将来部分は、CO₂含有量データ(b図)から算出した。a図の水色および赤色の点は、主要な大量絶滅イベント時の平均地表温度を示し、それぞれ寒冷化期(水色)およびその後の温暖化期(赤色)を表す(Kaiho, 2025)。緑色の白抜きひし形は、各絶滅直前の温度を示す。縦のエラーバーは、大量絶滅イベントに伴う温度異常の標準偏差を示す。黄色~オレンジ色の網掛け領域は、3つの緯度帯(0-30°、30-60°、60-90°)における地上性および表層水生(SS)後生動物の絶滅に対応する上限温度(GATELおよびGATES)を示す。灰色の網掛け領域は、30-60°および60-90°における地下性後生動物の絶滅閾値(GATEU)を示す。深海性後生動物の絶滅閾値は、紫色の水平線(GATED)で示される。「PT」および「KPg」は、それぞれペルム紀-三畳紀境界および白亜紀-古第三紀境界イベントを示し、−5、−1、1、5、8、11、14の数字はイベント番号に対応する。将来の大気中CO₂および酸素の枯渇時期の予測は、Ozaki and Reinhard(2021)に基づく。c図の灰色のグラデーションは、酸素に起因する後生動物多様性への制約の大きさを示し、濃いほど制約が強いことを表す。過去の大気中酸素データは、Krause et al.(2018)およびSperling et al.(2015)による。


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図2. 過去および未来の25億年間の昆虫、四肢動物、海洋多細胞動物の多様性変化。この図は、過去10億年および今後15億年にわたる昆虫、陸上四肢動物、海洋多細胞動物科の多様性の傾向を、主要な陸上植物のイベントとともに示している。地質時代における多様性データは、化石記録に基づいている。未来の多様性は、新たに求めた絶滅および回復の割合に基づいて算出した。-5、-2、1、5、8、10は事件番号を表す。濃い色のグラフは保守的モデル(保守的生態モデル)、薄い色のグラフは新しい進化モデル(今までにない適応進化)、赤線カーブは、最悪顕生代モデル(現代の環境破壊モデル)、黒線は継続最悪顕生代モデル(それが後生動物消滅まで継続するモデル)による計算結果を示す。動物の科の減少率は種の減少率よりはるかに小さくなることに注意が必要となる。生物の分類単位は、種、属、科など、一般に、一つの科は複数の属から成り、一つの属は複数の種から成っているために、科の数で見てくびれが生じるのは異常事態ということがわかる。シルエットは当時の代表的後生動物を示す。



用語説明

注1. 後生動物:単細胞生物である原生動物(アメーバなど)以外の、多細胞からなる動物の総称。器官や神経をもたない海綿動物を除く場合もある。この論文では後者の意味。メタゾア (metazoa)ともいう。



論文情報

タイトル:Future diversity and lifespan of metazoans under global warming and oxygen depletion
著者:Kunio Kaiho
*責任著者 東北大学名誉教授 海保 邦夫(かいほ くにお)
掲載誌:Biogeosciences
DOI:10.5194/bg-23-1199-2026



問い合わせ先

東北大学名誉教授
海保 邦夫(かいほ くにお)
Email:kunio.kaiho.a6[at]tohoku.ac.jp
*[at]を@に置き換えてください



東北大学 理学研究科・理学部