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宇宙の電磁波の通り道「ダクト」がつくる脈動オーロラは朝に多い! ~ 過去 7 年分の地上-衛星同時観測から明らかに ~
概要
● 北欧に設置されている地上カメラで観測された「脈動オーロラ」と、磁気圏と呼ばれる地球近傍の宇宙空間であらせ衛星によって観測された宇宙の電磁波「コーラス波」の同時観測を統計的に調査しました
● コーラス波の「長距離」伝搬と脈動オーロラの「パッチ状」構造を、宇宙空間における電子密度の管状構造「ダクト」が支配するという先行研究で示した物理モデルの普遍性を定量的に評価し、80%を超える高い割合で上記モデルが成立することを実証しました
● このモデルを満たすような脈動オーロラの発生頻度は、真夜中から朝にかけて発生頻度が上昇することも本研究で初めて示されました
総合研究大学院大学先端学術院 極域科学コース博士後期課程3年/国立極地研究所 特任研究員の伊藤ゆり氏、総合研究大学院大学/国立極地研究所の小川泰信教授をはじめとする名古屋大学、電気通信大学、金沢大学、東北大学などを中心とした研究グループは、北欧スカンジナビア半島の計6地点に設置されている全天型オーロラ撮像カメラと、地球磁気圏を観測する探査衛星「あらせ」(ERG)(※1)による脈動オーロラ(※2)の同時観測データを用いて、宇宙の電磁波であるコーラス波の長距離伝搬とパッチ状脈動オーロラの発生を統計的に調査しました。「あらせ」の観測が開始された2017年3月から2024年3月までの冬季(オーロラの観測が困難な白夜期間を除いた時期)に地上で観測された画像データを、同時に取得された衛星データと比較し、計30時間分の事例を抽出しました。その中から、これまでに提案されてきた物理モデル「脈動オーロラの『パッチ状』構造とコーラス波(※3)の『長距離』伝搬を、宇宙空間において電子密度が管状となるダクト構造(以下、『ダクト』と呼ぶ)(※4)が支配している」の普遍性を定量的に評価したところ、80%を超える割合でそのモデルが成立することを明らかにしました。また、このモデルを満たすようなオーロラの発生頻度は、真夜中から朝にかけて上昇することも本研究で初めて示されました(図1:先行研究および本研究で示したモデルの概要)。
近年では、地球大気中のオゾン減少を誘発すると考えられている超高エネルギー電子の降り込みとパッチ状脈動オーロラの発生は関係していることが分かってきており、脈動オーロラ研究の重要性は一層高まっています。本成果は、パッチ状脈動オーロラとダクトの関係を明らかにしたことで、脈動オーロラのパッチ状構造から超高エネルギー電子分布の可視化につながることが期待されます。
図1. 先行研究および本研究で示したモデルの概要。真夜中前(夕方側)ではコーラス波の発生そのものが少ない。真夜中付近になるとコーラス波が発生し、脈動オーロラも出現する。真夜中以降(朝側)では、ダクトによるコーラス波の長距離伝搬と超高エネルギー電子散乱、およびパッチ状脈動オーロラの発生が多くなる。
用語説明
※1. 「あらせ」(ERG: Exploration of energization and Radiation in Geospace):地球磁気圏の放射線帯を形成する高エネルギー電子の生成・消失プロセスの解明を目的とした、日本のジオスペース探査衛星。
※2. 脈動オーロラ:数秒から数十秒の周期で明滅を繰り返すオーロラ。パッチ状に決まった構造を持つタイプと形状が不定形な非パッチ状のタイプに大別され、パッチ状脈動オーロラは非パッチ状脈動オーロラよりも遅い時間帯(より朝側)に多いことが先行研究で示されてきている。
※3. コーラス波:地球近傍の宇宙空間である磁気圏の赤道面付近で発生する自然の電磁気的なプラズマ波動。高エネルギー電子を散乱させ、降下させる役割を持つ。
※4. ダクト:磁気圏において電子密度が周辺よりも極端に高い、あるいは低い管状の構造。光ファイバのように、密度の違い(屈折率の違い)によって波をダクト内に閉じ込めて長距離伝搬を促すと考えられている。
論文情報
タイトル:Statistical Study on Pulsating Auroras and High-Latitude Propagation of Chorus Waves Based on Conjugate Observations of Ground-Based Imagers and Arase Satellite
著者:
伊藤 ゆり(総合研究大学院大学先端学術院 極域科学コース 博士後期課程 3 年、国立極地研究所 特任研究員)
小川 泰信(総合研究大学院大学/国立極地研究所 教授)
吹澤 瑞貴(総合研究大学院大学 助教/国立極地研究所 特任助教)
田中 良昌(総合研究大学院大学/国立極地研究所/データサイエンス共同利用基盤施設 准教授)
門倉 昭(データサイエンス共同利用基盤施設 特任教授)
三好 由純(名古屋大学 宇宙地球環境研究所 教授)
細川 敬祐(電気通信大学大学院情報理工学研究科/宇宙・電磁環境研究センター 教授)
新堀 淳樹(名古屋大学 宇宙地球環境研究所 特任助教)
堀 智昭(名古屋大学 宇宙地球環境研究所 特任准教授)
笠原 禎也(金沢大学学術メディア創成センター/理工研究域先端宇宙理工学研究センター 教授)
松田 昇也(金沢大学理工研究域電子情報通信学系/先端宇宙理工学研究センター 准教授)
土屋 史紀(東北大学大学院 理学研究科 地球物理学専攻 教授)
熊本 篤志(東北大学大学院 理学研究科 地球物理学専攻 准教授)
松岡 彩子(京都大学大学院理学研究科附属地磁気世界資料解析センター 教授)
寺本 万里子(九州工業大学大学院工学研究院 宇宙システム工学研究系 准教授)
山本 和弘(名古屋大学 宇宙地球環境研究所 特任助教)
篠原 育(宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究所 教授)
掲載誌:Journal of Geophysical Research: Space Physics
DOI:10.1029/2026JA035231
詳細
□ プレスリリース本文:総合研究大学院大学ウェブサイトPDF
問い合わせ先
<研究に関すること>
東北大学理学研究科附属惑星プラズマ・大気研究センター[web]
教授 土屋 史紀(つちや ふみのり)
TEL:022-795-6738
Email:tsuchiya[at]pparc.gp.tohoku.ac.jp
東北大学理学研究科地球物理学専攻
准教授 熊本 篤志(くまもと あつし)[web]
TEL:022-795-6515
Email:atsushi.kumamoto.b1[at]tohoku.ac.jp
*[at]を@に置き換えてください
Posted on:2026年8月28日