東北大学 大学院理学研究科・理学部

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ペルム紀の大量絶滅に続きデボン紀の大量絶滅も大規模火山活動が原因 初めての陸上植生崩壊と大規模火山活動の同時性を実証

発表のポイント

● 動植物の陸上進出が起きた後期デボン紀の大量絶滅の原因は、大規模火山噴火であることを明らかにした。

● 水銀の濃集と同時に見つかった炭化水素の高温燃焼の証拠が決め手。

● 大量絶滅を構成する大中小の絶滅事件の絶滅規模と火山活動規模が一致した。

● マグマの温度が高いほど絶滅規模が大きいことが判明。

□ 東北大学ウェブサイト



概要

後期デボン紀に、植物、節足動物、脊椎動物が陸上に出揃って後初めての大量絶滅が起きました。史上2回目の大量絶滅にあたります。最近、その地層中に水銀の濃集が発見され、大規模火山噴火がその原因として提案されました。しかし、陸上植生が崩壊し土壌流出が起きると植物起源の水銀が海や湖に堆積するので、その水銀が火山起源とは限りません。東北大学大学院理学研究科地学専攻の海保邦夫教授(現:東北大学名誉教授)らの研究グループは、有機物高温燃焼で生成される有機分子コロネン(注1)と水銀との同時濃集を指標に、後期デボン紀の大量絶滅を構成する大中小3回の絶滅事件時に浅海で堆積した地層の岩石を分析しました。その結果、高温の火山活動で生成されるコロネンの濃集が水銀濃集と絶滅と同時に起きていたことを世界で初めて発見し、後期デボン紀の大量絶滅の原因は大規模火山噴火であると結論づけました。また、絶滅規模が大きい事件ほど、火山活動規模が大きいことを初めて明らかにしました。本研究の成果は、国際誌「Global and Planetary Change」に掲載されるのに先立ち、2月20日付電子版に掲載されました。



詳細な説明

地球上に各種の多細胞動物が出現して以来の過去5億2千万年間で、5回の大量絶滅が記録されています。それらの絶滅規模は、真核動物の種について65%以上で、地球環境は一変しました。その環境激変と絶滅原因の研究が世界中で活発に行なわれています。昨年、海保名誉教授らは、3度目の2億5千万年前のペルム紀末大量絶滅について、6環の芳香族炭化水素のコロネンという有機分子の濃集と水銀の同時濃集を発見し、その原因が大規模火山噴火と特定しました(https://www.sci.tohoku.ac.jp/news/20201109-11270.html)。今回の研究では、2度目の大量絶滅について、南フランスとベルキーと南中国から当時の浅海で堆積した岩石を採取し、堆積有機分子(注2)と水銀の分析をしました。その結果、大量絶滅を記録した地層でコロネンと水銀の同時濃集を見つけました。この結果は3度目の大量絶滅の結果と似ています。

2度目の大量絶滅は、約3億8千万年前から3億6千万年前に、約1千万年間隔で起きた大中小3回の絶滅事件で構成されています。(時代順は小大中です。)その間、植物が湿地に増えていき、シダのような小さい植物が大木になり、最後には森林が形成されました。また淡水硬骨魚類から両生類への進化が起きた時代です。海では顎がない魚類(無顎類)のほとんどが大の絶滅期に、板皮類が中の絶滅期に絶滅しました。これら古代魚の絶滅は現代型魚類の繁栄を起こしました。

コロネンは図1の化学式の炭化水素分子で、有機物の燃焼により生成しますが、分子量が同じかより小さい同類の分子より、生成するのに大きな熱エネルギーを必要とします。海保名誉教授らの研究で、コロネンの濃集は大量絶滅時のみで見つかっており、その熱源は高温マグマと小惑星・彗星衝突であるとしています。ペルム紀末と後期デボン紀の場合は高温マグマであり、そのような高温はマントル下部から発生するプルームと呼ばれる高温マントルの上昇により地球の固体最上部へ届き、そのマグマが石油・石炭・植物土壌のような堆積有機物を飲み込むことで、それらの炭化水素がコロネンに変わると考えています。水銀もそれら化石燃料から出るでしょう。岩石加熱で発生したCO2,CH4,SO2ガスが地中に溜まり、その圧力で噴火して、コロネンと水銀を成層圏を通して世界中にばらまきます。それを捉えたのです。SO2ガスは大気中で硫酸に変わり短期間の地球寒冷化を起こし、CO2,CH4ガスは長期間の地球温暖化を起こします。その気候変動により大量絶滅が起きました。陸上の植物が多くなった大中の絶滅事件時に大量土壌流出の証拠を有機分子の指標で捉えました。地球史上の最初の植生崩壊―土壌流出事件です。

これらの発見のきっかけは、海保教授が、古生物学の研究から有機地球化学の研究に転向したことでした。



今後の展望

この研究で使用した指標を使って、他の時代の大量絶滅の原因が明らかになるでしょう。私たちのコロネン指標は、遠く離れた場所で過去の大規模火山噴火の証拠を捉えるために使用できると評価されています。



論文情報

雑誌名:Global and Planetary Change

論文タイトル:Coronene, mercury, and biomarker data support a link between extinction magnitude and volcanic intensity in the Late Devonian

著 者:Kunio Kaiho, Mami Miura, Mio Tezuka, Naohiro Hayashi, David S. Jones, Kazuma Oikawa, Jean-Georges Casier, Megumu Fujibayashi, Zhong-Qiang Chen

URL :https://doi.org/10.1016/j.gloplacha.2021.103452



用語の説明

(注1)コロネン
普通の堆積岩に含まれる割合はわずかである。生成に高温が必要なため、平均的な森林火災の温度より高い温度(>1200 ℃)が必要。


(注2)堆積有機分子
生物が死後に堆積物中に残す有機分子と燃焼と熟成により生成する芳香族炭化水素の総称。前者は、安定な形に変化して保存されることが多い。粉末化した堆積岩から有機溶媒で抽出し、質量分析器で分子レベルで定量できる。



問い合わせ先


<研究に関すること>
東北大学名誉教授
海保 邦夫(かいほ くにお)
電話:022-394-3931
E-mail:kunio.kaiho.a6[at]tohoku.ac.jp

<報道に関すること>
東北大学大学院理学研究科
広報・アウトリーチ支援室
電話:022-795-6708
E-mail:sci-pr[at]mail.sci.tohoku.ac.jp

*[at]を@に置き換えてください



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